-重症熱傷の再生医療「自家培養表皮」-


重症熱傷の再生医療「自家培養表皮」

患者自身の皮膚を培養して増やす再生医療

表皮より深い真皮まで損傷が達するやけどが、小児の場合なら全体表面積の15%、成人なら30%以上になると「重症熱傷」とされます。外界から体を守る皮膚が失われると細菌感染し、敗血症を起こす危険を招きます。

重症熱傷による死亡者は、年間1000人以上とみられています。聖マリアンナ医科大学(川崎市宮前区)形成外科教授の熊谷憲夫さんによりますと、治療では、患者自身の正常な皮膚をはがし、患部に植える皮膚移植が必要になります。

しかし、広範囲のやけどですと、十分な皮膚を確保するのが難しくなります。亡くなった人から提供された皮膚を冷凍保存しておくスキンバンクがあり、解凍して移植する治療もあります。他人の皮膚なので、いずれはがれてしまうため、自分の皮膚が再生するまでのとりあえずの治療になります。

こうした問題を解消するために、患者自身の皮膚を培養して増やす再生医療が研究レベルで行われてきました。皮膚が、体の細胞の中で再生能力が高い特徴を生かそうというものです。そして2009年1月、愛知県のバイオベンチャー企業「ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)」が開発した培養表皮が、重症のやけどに対して保険適用されました。


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保険適用される培養表皮

病院から連絡を受けると、同社の社員が駆けつけ、患者から切り取られた切手大ほどの皮膚を持ち帰り培養します。約3週間で1000倍以上の面積に増えます。それを縦10センチ、横8センチのシート状に加工して、移植に使います。

自分の細胞を使った培養表皮は、はがれることなく、自分の皮膚と一体化します。患者さんは培養にかかる3週間は、スキンバンクから提供を受けた皮膚などで患部を覆い細菌感染を防ぎます。

1枚のシートは30万6000円と高価ですが、高額療養費制度の対象になり、患者さんの負担は、所得によって異なりますが、月額8万円強ですみます。熊谷さんは「培養にかかる時間が短縮できれば、もっと多くの人の命が救えます」と話しています。

培養表皮を保険で使える病院は、重症熱傷を治療できる基準を満たし、届け出る必要があります。全国には聖マリアンナ医科大学や愛知医科大学のほか、千葉県救急医療センター(千葉市)など約100施設あります。


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関係医療機関

聖マリアンナ医科大学病院

愛知医科大学病院

千葉県救急医療センター

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