-床ずれ(褥瘡じょくそう)の「局所陰圧閉鎖療法」-


床ずれ(褥瘡じょくそう)の「局所陰圧閉鎖療法」

床ずれ(褥瘡じょくそう)の原因

床ずれ(褥瘡じょくそう)は、体の特定の部位に体重の圧力がかかり続け、長時間血流が妨げられた結果、皮膚やその下の脂肪などの組織が壊死(えし)に至る状態です。おしりの中心の仙骨部、後頭部、かかと、肩、ひじなど、骨が突出した部位に起きやすいです。

寝たきりの人が床ずれ(褥瘡じょくそう)になりやすく、皮膚がただれ、悪化するとポケットのように深い穴が開きます。


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床ずれの危険因子は、以下のようなものがあります。

●やせて骨張っている。

●自分で動けない。

●栄養状態が悪い。

●おむつをするなど、常に湿っていて皮膚が弱い部分がある。

●関節がこわばっている。

●むくみがある。

日本褥瘡学会の2007年の試算では、床ずれの患者は、少なくとも12万人に上ります。2010年春、専用の装置で傷を密閉して、傷口から出る体液(滲出液しんしゅつ)を吸引し、回復を早める「局所陰圧閉鎖療法」が新たに保険適用になりました。床ずれ(褥瘡じょくそう)重症患者の治療の選択肢が、広がりました。

床ずれ(褥瘡じょくそう)の治療

杏林大病院(東京都三鷹市)形成外科講師の大浦紀彦さんによりますと、床ずれ対策で最も重要なのは、寝たきり患者さんの体にかかる圧力を分散させることです。寝返りを打たせることや、空気圧を調節できるエアマットレスなどの使用が必要になります。次に大切なのが栄養管理です。低栄養状態の患者さんは、傷の誘因となるむくみや骨の突出が、起こりやすいからです。

この2点を踏まえたうえで、出来た傷に対しては、ポリウレタン製のスポンジなどで覆って湿り気を保つなどし、皮膚の再生を促すのが治療の基本とされます。症状に応じ、傷をふさぐために盛り上がってくる肉芽の形成を促進する塗り薬やスプレーも用いられています。皮膚にとどまる浅い傷であれば、通常2~3週間でふさがるといいます。

しかし、傷が皮膚だけでなく、その下の脂肪や筋肉に及ぶほど深くなった重症例は治りにくいです。マットレスに皮膚が引っ張られるズレの影響で、傷が皮膚の下にポケット状に広がるケースも多く、病院に治療に来る患者さんの4割は、傷が皮下組織に至るタイプです。

保険適用になった「局所陰圧閉鎖療法」

2010年春、保険適用になった「局所陰圧閉鎖療法」は、こうした深い床ずれなどが対象になります。海外では、1990年代から専用機器が使われてきました。

壊死部分を切除し洗浄したうえで、傷にスポンジ状のポリウレタンをあて、上からフィルムで覆い密閉した後、穴を開けて吸引用チューブをつなぎ、中の圧力を下げます。

大浦さんは「陰圧すると肉芽の形成が促進されるうえ、吸引によって過剰な滲出液や老廃物を除去でき、傷を清潔に保てます。傷周囲の血流促進効果もあり、早い回復につながると思われます」と解説しています。

国内の11医療機関で、80人の患者を対象に、専用装置を用いた陰圧閉鎖療法の臨床試験を行ったところ、5センチ以上の傷が閉鎖(肉芽が出来た状態)に至った平均日数は17・7日です。従来の治療を行った127人の平均63・5日と比べ、大幅に短縮しました。

重症患者の場合、回復を早めるために、壊死した組織を切除し、皮膚を移植する手術を行うことも多いいですが、「事前に陰圧閉鎖療法を行えば、切除範囲を小さくできることも多くなる」と大浦さんは話します。

なお、傷口が細菌に感染していた場合は、抗菌剤を先に使用します。細菌繁殖の恐れがあるので、すぐに傷を覆うのは避けた方がいいそうです。


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関係医療機関

杏林大病院

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